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第15回ウェルビーイングラウンジ 「大陸内部湖沼の乾燥化による重金属汚染土壌の形成過程」

第15回ウェルビーイングラウンジ 「大陸内部湖沼の乾燥化による重金属汚染土壌の形成過程」

2025年9月3日(水) 16:00

東京科学大学 湯島キャンパス MDタワー16階 小会議室3

2025年9月3日、金沢大学 環日本海域環境研究センター・陸域環境領域教授 福士圭介先生をお招きし、第15回ウェルビーイングラウンジを開催しました。

ラウンジでは、福士先生にモンゴル南部「オログ湖」を例に、大陸内部湖沼が乾燥化によってどのように重金属汚染土壌を形成するかについてご講演いただきました。

1.湖沼の急速な乾燥化と背景

モンゴルでは近年、湖沼の約20%が消失。主因は 降水量減少 と 過放牧。乾燥化は生態系、生物多様性、そして黄砂の増加など広範な影響をもたらします。

2. 塩湖の特徴と重金属の挙動

オログ湖は流出口のない塩湖であり、蒸発によって水質が濃縮されやすい環境です。通常は吸着される 重金属(特にウラン) が、この湖では湖の縮小に伴い直線的に上昇し、ウランをほとんど固定できないことが原因と考えられました

3.乾燥後の湖底で起こること

湖が干上がると、ウランの多くが 水溶性の塩(可溶性ウラン塩) として析出。微細粒子は風で運ばれやすく、黄砂に混じって広域へ拡散すれば 健康リスク となる可能性があるとのことです。

質疑応答の要点:

  • 中央アジアの他地域でも同様のリスクは?
     → 乾燥化が進めば、河川・湖沼に固定されていたウランが再溶出する可能性あり。
  • 生態系や健康影響は?
     → 湖の水は人の直接飲用は少ないが、家畜・野生動物への長期影響は調査が必要。
  • 除去方法は?
     → 鉄凝集沈殿法でウラン除去は可能。ただし pH 条件の管理が鍵。
  • 他の元素は?
     → ヒ素・モリブデンなどのオキシアニオン元素も同様に濃縮しやすい。

まとめ

本講演は、気候変動に伴う湖沼乾燥が 重金属汚染・大気汚染・健康影響 へ波及する可能性を示し、環境科学の観点からも、ウェルビーイング創成の観点からも重要な示唆がありました。中央アジア地域での共同研究に発展する可能性もあり、地球規模での環境課題に向き合う視点を共有する有意義な時間となりました。