第11回ウェルビーイングラウンジ「わが国の尊厳死の現状~韓国とカナダと比較して~」
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東京科学大学 湯島キャンパス M&Dタワー2階 共用講義室2
2025年4月16日(水)18:00
2025年4月16日、第11回ウェルビーイング・ラウンジを開催し、日本医科大学教授・日本尊厳死協会理事長の北村義浩先生をお迎えしました。今回は「日本の尊厳死の現状~韓国とカナダとの比較から~」をテーマに、人生の最終段階における医療をめぐる国内外の現状と課題について、貴重なお話を伺いました。
北村先生はまず、尊厳死を「延命治療を行わず自然な最期を迎えること」と定義し、「安楽死」とは異なる概念であることを明確に示されました。その上で、安楽死が法的に認められている国の一例として、カナダの取り組みが紹介されました。

カナダでは、2016年に医療介助死(MAID)が合法化され、2023年には全死亡者の約5%がMAIDによるものだったとのことです。対象は18歳以上で、深刻かつ回復不能な医学的状態にある患者(ただし精神疾患のみを理由とする場合は対象外)に限定されており、実施にあたっては直前まで本人の明確な同意が求められます。
次に、韓国における尊厳死をめぐる法整備について紹介されました。2018年に施行された延命医療決定法により、臨終期(余命数日の段階)における延命治療の中止が法的に可能となりました。ただし、ここでは本人の意思に加え、家族の同意も必要である点が特徴です。
日本では、安楽死や尊厳死に対する議論は深まりつつあるものの、法制化はなされていません。しかしながら、本人の意思を文書で明確に残す「リビング・ウィル」の作成に賛同する人々は増えているそうです。講演では、自分の人生をどのように締めくくるかについて、自らの意思を明確にし、それを実現するために周囲の人々と日常的に対話を重ねることの大切さも強調され、多くの参加者に深い印象を与えました。

当日は40名を超える参加者が集い、尊厳死や安楽死をめぐる制度・倫理・医療技術に関して、多岐にわたる活発な質疑応答が展開されました。
北村先生のご講演に、心より感謝申し上げます。